「ねぇ、スコール」
「なんだよ」
「……僕たちね、分かれることにしたんだ」
テンガロンハットを目深に被った男の言葉に、スコールは仕事の手を止めた。
「初恋って、叶わないってよく言うだけあるよね」
無言のまま見つめる視線の中、抑えきれない震える声で、アーヴァインは自嘲していた。
――――好きだし愛していた。けれどそれは、過去の偶像に過ぎない。
「アービンは、あのままだとダメになりそうだったの」
「セルフィ」
何かを言おうとして、こういう話題の時に、何も浮かんでこない事に、ゼルは安堵と後悔を抱いた。
たぶん切っ掛けは、自分の余計な一言だったから。
「ゼル、ありがとうね」
寂しそうに、それでも吹っ切れた顔で微笑む、よく知っているはずの仲間の顔は。
ゼルでも息をのむほどに、見惚れる程に美しかった。
――――好きだ、愛しているの言葉が嬉しかった。でも、それは本当に今の私なの?
「俺はどうすればよかったんだ」
「貴方が気にしてどうするの」
「でも」
「でもも、なにも、ないでしょう?」
「…………わかってる」
堂々巡りの頭を抱えて、沈み込むゼルを見つめながら、キスティスは暗い顔でため息をつく。
空っぽの補佐官の席を見つめて、彼女は目を閉じた。
――――昔から、誰に何を言われても、自分が決めた事を貫く姿が、憎たらしかった。

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