✟ 大鍋でボイルソーセージ ✟
……疲れた。
ただ只管に、疲れたという感想しか出てこず、なんとか帰ってこれた自室で溜息が出る。
何時もの白いロングコートを、何とかクローゼットに放り込んで、寝台に寝転がる誘惑を振り切って、共用エリアに向かう。
……一先ず、シャワーか。
眠気覚ましのために、風呂場に直行する。
服を脱いで、自分の洗濯籠に放り込む。
さっさと脱ぐ捨てて、風呂場に入り、シャワーのバルブを一気に回す。
頭上から温めきれない、冷たい水が降り注ぐ。目覚ましに丁度いい。
愛用のシャンプーを手に取って、その軽さに舌打ちする。
そういえば昨日使い切り、中身を補充するのを忘れた。今から補充するのも面倒だ。
「……まぁ、いいか」
なんとなく、いつもは手に取らない物に、手を伸ばす。
持ち上げて、中身の容量を確認。
十分な重さがあるので、少し使っても問題ないと自分で納得し、スコールの分を拝借する。
サイファーからすると、神経質な程に身嗜みの道具に気を遣うのがスコールだ。
石鹸や洗剤等、日常的に使用する物品は、バラムガーデンが基本的に支給してくれる。
足りなければ、学生寮の備品室から補充もできる。
バラムガーデンからの支給品で十分なサイファーとは異なり、スコールは自分好みを取り揃えている。
何が違うのか、サイファーにはあまりピンとこない。
適当に量を貰って、さっさと洗ってしまう。短髪はこういう時に便利だ。
身体もザッと洗って、シャワーで洗剤と汚れを落とす。
少しスッキリした意識で、ほっと一息ついて、脱衣所のバスタオルで水気を拭う。
ガシガシと適当に、頭髪の水分も拭って、ぽいっと使用済みの洗濯籠に放り込んだ。
下着のパンツだけ履いて、服を着ようとして、替えの服を持ってくるのを忘れていたことに気づいた。
「……外出ねぇし、いいか」
パンツ一丁のまま、ふらっと部屋に出る。
服を取るのに、自室に戻るのも面倒だった。
むしろ今、ものすごく眠気と空腹に襲われている。シュワーでさっぱりしたが、やはり眠気には勝てていない。
くわり、と思わず欠神が出る。このまま自室に戻ったら、寝台の誘惑に勝てずに眠ってしまいそうだ。
しかし、眠るにしても。
「……はら、減ったな」
今日は久しぶりに、早朝から肉体労働だった。具体的に言うと、モンスター討伐任務。
バラムガーデンからほど近く、バラム国内ともいえるアルバトロス諸島での討伐任務だったので、ガーデン所有の高速上陸艇で行き来が容易な事も有難かった。
「茹でるか」
頭が回っていないが、何とかなるだろう。
くわり、ともう一度だけ欠神。
キッチンに無造作に置いていた、黒いエプロンを身に着ける。
重たい瞼を根性で上げて、冷凍庫を開く。
こういう忙しい時、疲労した時の為に、購入していたお気に入りのパックがある。
「あった」
記憶違いかと思ったが、存在していたので良しとする。
ずるっと、目的の冷凍パックを、冷凍庫から引っ張り出す。
「……二種類食うか」
もう一つ、追加で引っ張り出す。
シンクの上に転がして、冷蔵庫を閉める。
大きめの鍋を取り出して、たっぷりと水を入れる。水だけがたっぷり入った鍋をコンロにおいて、強火で付ける。
沸騰しやすいように、鍋に蓋をして、放置。
これでメインの準備はできたが、流石に主食が欲しい。
ライスの気分ではなかったので、適当に買い置きしていたミニバケットの袋から、何個か取り出す。
……全部でいいか。
どうせアイツも食べるだろう。
「……これでいいか」
何個か斜めにスライスするかと考えたが、面倒になってきた。どうにでもなるように、全て縦半分に切ってしまう。トースターに適当に何個か入れて、タイマーをぐるりと回す。
少し考えて、野菜室を開けて、使いかけのレタスを取り出す。
ざっと水で洗い、レタスを豪快に一枚づつ千切って、サラダボウルに突っ込む。
極めつけに、コーン缶を開けて、ざっとレタスの上に盛り付ける。
「よし」
まだ時間がかかるので、ラップをして、サラダボウルは冷蔵庫に入れておく。
サラダを仕舞い終わると、鍋からぐつぐつと丁度茹だった音がしたので、蓋を取る。
電子タイマーを冷凍パックに記された、規定時間にセット。
白いソーセージが詰め込まれた冷凍パックと、見慣れた色のソーセージが詰め込まれた冷凍パックを、湯の中に沈めてタイマースイッチを押す。
二つの冷凍パックが湯の中で踊るのを、ぼうっと眺めていると、チンッ!とトースターが終了を告げるチャイムを鳴らす。
トースターから一回目のミニバケットを取り出して、二回目を投入して、再びタイマーを回す。
そこそこ熱く、カリっと焼き上がったミニバケットを、適当に大皿に盛る。食べられる分だけ食べればいいだろう。
時計を見れば、もうすぐスコールが帰ってきそうな時間だった。
自分の任務地とは違い、スコールの今回の任務地はバラムより距離がある。
……そういえば、久しぶりに離れたな。
ぐつぐつと茹だっている鍋を見ながら、最近の行動を思い返す。
外出すると色々と面倒過ぎて、バラムガーデンを出るのを控えていた。大体的に出るにしても、スコールと一緒のモンスター討伐が多い。それもあれも、スコールが警戒しているのが原因だったが。
今回は、久しぶりにスコールと別れての任務だった。
……出るまでが大変だったけどよ。
変な奴に話しかけられても無視で終わらせるな。誰かを呼べ。いやもういい風神、頼んだぞ。あと必ず時間通りにバラムガーデンに帰ってこいよ。それからそれから。
くどくどと言われた事に、任せろとサムズアップする風神を横目で見つつ、この男の頭を殴り倒すか数秒悩んだものだ。
「めんどくせぇ」
離れて出かけるのも面倒になってきたなと、感想を思い起こしていると、トースターが二回目の完了を知らせてきた。
トースターから焼き上がったミニバケットを、再び一回目と同じ大皿に放り込む。
鍋を確認。吹き零れる気配がないので、大皿に乗せたミニバケットを、テーブルに移動。中央に無造作に置いておく。
序でに、サラダボウルと冷えた冷茶も冷蔵庫から取り出して、テーブルに並べて置く。
タイミングよく、玄関のオートロックが解除する音が聞こえた。
「ただ……………」
「おかえり」
疲れた気配を隠す事もなく、ふたりと帰ってきたスコールが硬直した。
こちらを見て、目を見開いている。
呆然と立っていると言ってもいい。
帰宅の挨拶も途中で終わっている。絶句して立ち尽くしている様が、不思議だった。
何はともあれ、汚れがあるままの食事は、当人も嫌だろうし。
「着替えて来いよ」
ぐつぐつ鍋の音が聞こえるので、一声かけてから、火の用心のためにキッチンに戻る。
タイマーを見れば、そこそこ時間が経過している。
ちょっと奮発した上物のソーセージだ。
どうせなら、茹で時間きっちりに茹でて、引き上げたい。
「サイファー」
「あ?」
いつの間にか、背後にスコールが立っていた。
着替えてさえいない。
「スコール?」
「サイファー」
呼ばれて、近寄られて。
そして、
「サイファー」
「……っ!?」
むぎゅ、と尻を揉まれた。
ちょっと現実に自分が追い付いていない。
男の硬い尻を撫でて、揉んで、何が楽しいのか。
驚きすぎて、息が詰まる。
背後に立っている男が、舌なめずりをしたのが、分かった。
「サイファー」
はぁ、と熱い吐息が首筋にかかり、血が出ない程度の強さで、項に噛みつかれた。
思わず、驚きすぎて身体が跳ねる。
「な、……にを」
「サイファー、選べ」
振り返った先、至近距離に、獣の瞳がある。
興奮からか、瞳孔が絞られて、灰色が混じる青眼がギラつく欲望を隠しもしない。
まるで、戦場で相対した時の、スコールのようで。
「今すぐ、服を着てくるか」
ぴったりと肌に張り付くパンツを引っ張られて、身体が反射的に震える。
「俺に、食われるか」
するりとパンツの中に入ってきた素肌が、その手が、ぎゅむりと、強く尻を掴んできた。
「―――――んっ」
冗談だろと、言い捨てる段階は過ぎていた。
知っているはずなのに。
知っていたはずなのに。
あの時、仮眠室で見ていたはずなのに。
『……絶対に、責任を取らせるからな』
お前を食べると宣言した、獣に出会っていたのに、見誤っていた。
どうせ、手を出せはしないだろうと、高を括っていた。
「サイファー」
「……ぁ」
指が。
スコールの、指、が。
あらぬ所に触れてきて。
顔が熱い。
駄目だ。
やめっ……!
「――――本当に食うぞ?」
怖い。
目の前にいるのは、知っているのに、知らない男だった。
「着っ、替え……る」
「そうか」
するりと、手がパンツの中から撤退して、ホッとしてしまった。
心臓が、苦しい。
顔が、本当に、熱い。
スコールがジト目でこちらを睨んでいるのが、恥ずかしくて、視線を逸らす。
「………あんた、本当に、ずるい」
「何、が」
「その顔、俺以外の前でするなよ?」
「……は?」
何を言っているのか、理解できない。
深呼吸を繰り返す内に、なんだか腹が立ってきたので睨みつけると、深々と溜息をついてスコールが片手で顔を覆ってしまった。
なんなんだよ、本当に。
「…………茹で時間まで、鍋見とけよ」
「わかってる。タイマーが鳴る前に戻るだろ?」
「ああ」
―――――――― ▼ ――――――――
ふらりと自室に向かうサイファーの背中を眺めながら、どっと冷や汗が出てきた。
危なかったと、スコールは自分の胸に手を当てながら、落ち着くために深呼吸をする。
まだ、バグバグと心臓が鳴っている。
そしてあらぬ所が反応しそうで、本当にギリギリだった。
「勘弁してくれ」
ぐつぐつと茹でられている物の様子を見ながら、はぁ~~っと深く吐息を吐く。
凄く驚いた。
頭が回らない疲労感が、吹き飛ぶような光景だった。
――――裸エプロンにしか、見えなかったっ!!!
くそが、内心で思う気持ちを舌打ちで誤魔化し、自分の煩悩が口から出ないように噛み殺す。
シャワーを浴びて、パンツ一丁でうろつく。
分かる。
疲労が限界だと、もう下半身を隠すだけで十分だよなって思うよな。
腹が減ったから料理をする。
分かる。
思いっきり働いた後は、なんかお腹が空くよな。特に俺たちは肉体労働が多いし。
エプロンをそのまま着用する。
なんでだ???
そこは火傷とかを気にして、服を着に行って欲しかった!!!
そのままエプロンを着るんじゃないっ!!!!
俺、あんたに言ってただろ!?あんたを食うぞって宣言してただろうが!!やめてくれ俺みたいな煩悩の塊がいる所で、変なシチュエーション作らないでくれ!!しかもあんた、シャンプーを切らしたか何かで俺の物を使ったな!?匂いでバレバレなんだよ!!やめろよ俺を呷るなよあらぬ所が元気いっぱいになって勢いで行く所まで行きかねなかっただろうが!!!
頼むから!!!
俺が紳士であったことに感謝してくれ!!!!
いやまて。
紳士だったか俺?????
「…………………はぁ」
酷い自分の有様に、両手で顔を覆ってしまう。
本当に、勘弁してくれ。
目に飛び込んできた、素肌に黒エプロン。
下半身に何も履いてない疑惑が浮上する、もろ素足。
くるんっと背中を向けてキッチンに行った時に、パンツがあったのだけが救い。
――――でもない。
あと少し、ほんの少し。
サイファーの否定が遅ければ、サイファーがどれだけ抵抗しようと、本当に食べてしまう所だった。
……疲れると、うん。そうなる時って、あるよな。
気合で、あらぬ所を沈めた事を誰かに褒めて欲しい。
いや、嫌だ。
こんなの褒められたくない。
いやそうじゃなくて。
何考えているんだ俺は。
それはそれとして、
「……いい肌触り、だったな」
勢いで揉んでしまった事は、後悔してない。
触れてはいけない所に、触れてしまったことだって。
しかし、それはそれとして。
とりあえず、頼むから、俺から自衛して欲しい。
……本当に、食っていいなら、食ってたぞ。
いい加減に、思い知って欲しい。
俺より白い素肌。
俺より発育がいいからか、柔らかい筋肉。
そして何より、羞恥からだろうか。
目尻を赤く染めて、こちらを戸惑うように見つめてきた、碧色の瞳。
次の行動が怖いのか、微かに怯えの色があったけれど。
その瞳の色が、そこに宿る感情が、――――嫌悪なんて微塵もなかった事が。
「やばい」
忘れないとヤバい。
まだだ。まだ食べる時じゃない。
まだ、我慢だ。
「……まだ、だ」
俺の腕の中に、自ら収まった時が。
食べられてもいいと、受け入れてくれた時が。
本当の意味で、俺に堕ちてきた時が、食べ頃なんだから。
―――――――― ▼ ――――――――
眠い時は、すぐに寝よう。
身に着けたままだったエプロンをぺいっと寝台に放り、決意を新たにしながら、ルームウェアを着用する。
……なんで下着一丁でエプロンつけた???
自分で自分の行動が、わからない。
再発防止のために、眠い時は寝るか。
……別に、スコールが帰ってくるから、飯の準備をしてたわけじゃねぇし。
そうだ。
俺が腹が減ったから、準備してただけだ。
腹が減った事は事実なんだから。
なんかちょっと腹が立ってきた。勢いよく自室の扉を開けて、出る。
タイミングよく、タイマーが鳴った。
「あっ、サイファー。これ出せばいいか?」
「……おう」
流石にスコールでも分かるか。
コンロの火を切って、冷凍パックを湯から取り出しているスコールを見ながら、皿を二枚用意する。
「あっつ!」
「ばぁ~か」
沸騰した湯で茹だった物体だぞ。熱いに決まってるだろうが。
顔を顰めて、パック開封に四苦八苦しているスコールを尻目に、もう一つのパックを取る。
熱いのは承知の上で、調理用の鋏でパックを切る。
つるり、とパックから出てきたボイルソーセージを皿に落とす。
「……色が違うな?」
「そりゃ、種類が違うからな」
何故か鋏を使わずに根性でパックを手で引き千切り、皿にボイルソーセージを出したスコールが、出てきた種類の違いに驚いていた。
……そういえば、ここらで、白いソーセージは珍しかったか。
お互いの皿に盛られたソーセージを、丁度半分になるように分けて調整する。
「こっちがよく食べる物に近い、粗びき豚のソーセージ」
赤肉のソーセージを指さしつつ、スコールの分の皿を渡す。
「こっちが、現地以外で珍しいヴァイスヴルスト。ようするに白いソーセージだ」
「へぇ」
自分の皿を持ちながら、白い方を指さしにて解説しながら、スコールに皿を押し付ける。
納得したようにスコールは頷いて、両手に皿を持ってテーブルに向かう。
その様子を見ながら、冷蔵庫からケチャップと甘めの粒マスタード、それとバターも取り出す。
コップも二個片手で持ち、ナイフとフォークを二人分持つ。
テーブルに向って、カトラリーを渡しつつ、向かい合わせに座るスコールを見てから気づく。
「……お前、着替えは?」
「着替えたら寝そうだ。食ったらまず寝る。……手は洗ったぞ?」
「…………おう」
手、と聞いてふっと思い浮かんだ事を、全力でなかったことにする。
今は飯を食いたい。
問題が先送りになったとわかっていて、見ないふりをして、いつも通りを過ごす。
「いただきます」
「いただきます」
「ああ、そうだ。白い奴は、皮を剥がして食べるのが正式な食べ方だ」
「…………皮を、剥ぐ?」
両手にナイフとフォークを持ったまま、何を言われたのか理解できないスコールが、首をかしげている。
わかる。
そうだよな。俺もそうだったぜ。
教えられても、何言ってんだって思ったもんだ。
あの店で、雷神なんて説明を無視して食いちぎってたし。
「やり方は色々あるけどよ」
ナイフとフォークで、白いソーセージの位置を調整して、縦半分にスパッとナイフで切る。
皮と肉の間にフォークを差し込んで、くるんっと皮を向いて中身を出す。
「俺は、これが一番やりやすい」
「……皮は食えないのか?」
「いや、食える」
「ん?」
「要するに、伝統って事だよ。白いソーセージは中身が他と違って、ふわふわしているからな。その食感や風味を損なわないようにって事らしいぜ?」
確かそんな感じの話だった、はず。
やばいな。興味なくて触りの話題しか知らねぇ。
……味には関係ないからいいか。
皮を剥いだ白いソーセージの半分に、甘めの粒マスタードをつける。これで食べるのも、現地の主流らしい。
ただ、俺はケチャップも追加するのが好きなので、追加する。
縦半分のソーセージを、さらに半分にカットして、食べる。噛み締めると、他のソーセージでは味わえない、柔らかい肉の触感がする。
「まぁ、外じゃねぇし。好きに食えよ」
「……あんた、皮は?」
「めんどくせぇから、普段はやらねぇ」
縦半分に切った片方は、皮をそのままに食べた。ソーセージの皮が個人的には好きなので、それを剥いで食べる白いソーセージは、個人的に残念な代物だ。
例え現地民に邪道だと言われようとも、自分の家だし普通に好きに食う。
……でも、上手いんだよなぁ。
時々、こうやって冷凍パックをお取り寄せして、冷凍庫に入れる程度には好きだ。
手に取ったミニバケットが、口内の水分ごと肉汁を拭うようで、美味い。
……ここのメーカーのソーセージ、パンと食うと美味いんだよな。
マナー違反とか気に留めず、ナイフでバターを拭って、ミニバケットに塗って食べる。
パンが冷め始めているから、バターは十分に溶けていない。けれど、口に入った時に、口内の温度でバターが溶けて、パンと絡みつくのも俺は好きだ。
普通に美味い。
次は赤肉ソーセージを食うかと考えていると、ブチッッ!という、盛大に皮が被れる音が聞こえた。
何をしたのか予想はつく。
スコールの方を見れば、豪快に白いソーセージを横半分に切ったところだった。
皮は剥いでいない。面倒が嫌いなスコールなので、だろうなという納得しかない。
真っ二つにした白いソーセージの片割れに、俺の見様見真似かマスタードとケチャップをつけている。
んあ、と大きく開いた口が、半分のソーセージを一口で飲み込んだ。
もっち、もっち、と大きく顎を動かしているスコールの目が、驚いている。
間髪入れずに、サラダボウルからレタスを何枚か突き刺して持っていき、もっしゃもっしゃ食べている。
フォークを振り下ろす様が、何度見ても獲物の息の根を止める、最後の一撃に見えるのをどうにかしろとも思う。
……言わねぇけど。
「んん~!」
目がすごいキラキラしていらっしゃる。
美味いらしい。
やはりスコールも、自分と同じように皮は気にならないようだ。
スコールは、こちらが見ているのに気づかないのか、うん、うん、と頷きながら、今度は赤肉ソーセージにフォークをぶっ刺した。
くわっと開いた口で、頬張れるだけソーセージを頬張り、含みきれない所を噛み千切る。
皮が破れた所から、上等なソーセージらしく豊富な肉汁が溢れているが、上手い具合に皿で受け止めて、飛び散らないようにしている。
「んっ、んっ!」
……ナイフ使えや。
口から出そうだった言葉を飲み込んで、赤肉ソーセージをナイフで切り落として、フォークで刺す。
たっぷりとケチャップをつけて、口に放り込んだ。
流石、お高い上物。
美味い。
その後の話。
あのソーセージはないのかと、しょんぼりとするスコールを見かねて、サイファーはご褒美食品として常備するようになる。
三回目から常備されていた事に気づき、こっそり値段を調べたスコールは、座った眼をしてサイファーを壁ドンして宣言した。
「俺が食いたいから、俺が払う」
「お、おう」
さらに後日。
サイファーが〝ガーデン食堂〟に売っていない、〝お取り寄せ品〟購入の為に使う通販食材サイト。
そのカード払いの請求先が、全てスコールに塗り替わっている事に気づき、サイファーは頭を抱えていた。
勝手に個人情報を塗り替えた事に対して怒ったサイファーと、不満そうなスコールにより、払う払わない論争は三日三晩続いたが。
今では、〝ガーデン食堂〟以外からの〝お取り寄せ品〟は、何故か全てスコールが払っている。
「……俺様に貢ぐんじゃねぇよ」
「別に、貢いでない」
安全の為に、外部通販の受取先に指定されている事務局から荷物を持ってきたスコールは、ぐいっとサイファーに荷物を押し付ける。
中を見たサイファーは、苦笑交じりにため息をついた。
届いていたのは、スコールではなくサイファーが好きな、冷凍パックの美味しい魚介類の詰め合わせだった。
つまり、そういう事である。
この二人の行動を、こっそり事務局から知らされたキスティスが、動物の求愛行動でもあるまいしと、呆れたように呟いた事を二人は知る由もない。

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