❖ 僕らのハロウィン★ナイト! - 2/8

 

ハロウィンの起源は古い。
歴史書を紐解いて遡れば、古代セントラ文明の文献にまで辿り着くという。
一度、その文化は正しく継承されずに、失われた。
聞く所によれば、古代セントラ文明との繋がりが深いと噂のシュミ族と、シュミ族の関わりが深いエスタの田舎地方。そして南のセントラ王国のあった地方では、脈々と続く〝セントラ式ハロウィン〟が続いているらしい。
しかし今回、関わるのはそちらではない。
廃れかけた街を盛り上げたい地元住民の雄姿の一人が、古びた風習を発掘して、独自の解釈を元に〝町内のお祭り〟として復活させた。
それが全ての始まり。
末永く今代まで続き、情報伝達技術の発達から数年で一気に世界中に広がった、〝トラビア式ハロウィン〟の起源である。
その重きは確かに、古式ゆかしい逸話を元にしてはいるが、重要視するべくは〝お祭りの話題〟が発端となり、復活したイベントだという事である。

「せやから、これは戦いやねん」

積み上がる資料。
積み上がる申請書。
積み上がるイベント企画計画書。
いつの間にか集めた署名の束。
それらを従えながら、セルフィ・ティルミットは、仁王立ちで指揮官室の中に立っていた。
「いかに、周囲を巻き込んで」
「いかに、周囲を盛り上げて」
「いかに、ご先祖様を満足させるのか」
「これは、子孫としての戦いやねん!!」
気合一発、片足をダンッ!と椅子に打ち付けて、セルフィは拳を握りこんで力説した。
宛ら、スポットライトを浴びているような、存分に良き空気を吸っている様である。
「……で?」
対して相対するのは、バラムガーデンの指揮官室の長であり、今ではSeeDを束ねる指揮官の地位に座する、スコール・レオンハート。
そこそこに執務机の上に積み上がった書類を見つめながら、スコールは深々と溜息をつく。
「それと俺たちに、何か関係があるか?」
「あります!」
力強く挙手して発言したセルフィに、無駄にゼルが拍手を送る。
キスティスは、小休憩のコーヒーを一口飲みながら苦笑いを浮かべ、経緯を見守る。
サイファーは我関せず、もくもくと仕事を続けている。
椅子に座っている雷神は、落ち着かないようできょろきょろと周囲を見渡している。
そんな雷神の背凭れを蹴り飛ばしながら、風神はサイファーの処理済みの書類を、さくさくとファイリングしていく。
アーヴァインはセルフィ側なのか、にこにこ微笑みながら書記の如くメモを取っている。
本日、指揮官室にはいつもの面々しかいない。
繁忙期にて収集される、お手伝い要員たちはおらず、あくまでも中枢人物だけが集っていた。
そんな〝見知った何時もの面々〟の中、十分な注目を集めたセルフィが口を開く。
「まず、今話題の〝トラビア式ハロウィン〟は、熱々のお祭りなのです」
「ほう」
「一つ、真似がしやすい。一つ、わかりやすい。一つ、開催するのに初期費用は少ない」
1,2,3、と指を折りながら告げていき、セルフィはにっこりと笑う。
「もちろん、大規模になればなるだけ、凝れば凝るだけ、お金はかかるよ?でも、〝子供が仮装して町中を歩く〟というポイントだけに絞れば、お安くできるお祭りでしょ?」
「……………」
「ご近所さんだけでも、開催できるやん?」
「……確かに、な」
手に取っていた書類を机の上に置いて、スコールは腕を組んだ。
聞く姿勢になった事に、セルフィはにんまりと我が意を得たりと笑う。
「そこや!」
「……どこだ?」
「その1、真似しやすい。その2、開催しやすい。その3、話題に乗りやすい」
折った指を戻しながら告げて、パーの形にした手をスコール二突き出して、セルフィはずっと笑っていた。
「つまり〝トラビア式ハロウィン〟は、電波障害がなくなったからこそ、口コミやネットで広がり、かつ差別化の為に発展していくと思うねん!」
今でこそ、トラビア地方の周辺にて爆発的に広がっていたお祭りだ。
電波障害が解消され、広く世界に電脳技術が発展していく日々。
ティンバーのマスメディア各社が、ネットワークを利用した情報発信を検討し、一部は実施に踏み切っている今の時代。
話題に乗りやすい季節イベントであり、真似しやすく、差別化もでき、開催もしやすい〝トラビア式ハロウィン〟は絶対に流行る。
そして流行るという事は、大規模なイベントになるのも、時間の問題……のはず!
「つまり、SeeDの依頼が増えるかもしれへんやん!」
SeeDとは、ブランド化された優秀な傭兵の、今では魔女大戦のおかげで話題性抜群のコードネームである。
言い方は悪いが、前任マスターの目的の為に〝高級品〟として育成されたおかげで、あらゆる状況に対応しやすい一面も持つ。
故に、パーティーの潜入任務や、お祭り会場での隠密活動等は、SeeDに渡る依頼の中でもポピュラーなものだ。
ならばこそ、それを知らなければ、SeeDが廃る!
「一度、〝トラビア式ハロウィン〟を、全体的に体験するのはええことやと思うねん!」
「それに~?」
「お祭りやりたいやん!!」
「セフィらしいね~!♡」
SeeDの仕事を絡めたプレゼンをしていたはずなのに、アーヴァインの合いの手に本音を素直に吐き出すセルフィに、スコールは溜息をつく。
元気いっぱいで、目をキラキラさせているセルフィを、でれでれとした顔で幸せそうに見るアーヴァインは、意図的に見ない事にした。
恐らく、アーヴァインにも考えがあるのだろうが、それを一言も言わずにセルフィ側についている。
それが気になるが、落ち着けば話してもらえるはず。
「それにな、スコール」
「なんだよ」
「イチオシの情報があるねん」
「だから、何が」
「あのな?」
すすすっと近寄ってきたセルフィが、こっそりとスコールに言葉を零す。
他の面々は、セルフィがスコールに囁いた言葉を知らない。
ただわかるのは、それを聞いたからこそ。
堅物の指揮官スコール・レオンハートが、お祭りイベントの開催に許可を出したという、小さな事実だけだ。

 

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