❖ ハンプティダンプティは覆せない【上】 - 4/5

 

「悪いな。アルパレドさん。ちょいと待ってくれ」
「いえ、大丈夫です。お話は伺っておりましたから」
申し訳なさそうなクーヴァルの言葉に、アルパレドは胸を張って答える。
今回の取材に関する打ち合わせ中、もう一人共に行くという話を聞いていた。
「悪いな。そろそろだ」
「……すまない。遅れた」
「おお、思ったより早かったな」
アルパレドは、クーヴァルの待ち人が到着したと聞いて、何気なく振り返った。
これから先、少しの間に関わりあいになる確率は上がりそうだったから。
けれど、その思考はアルパレドの中から、ガラスの様に粉砕された。

 

「――――え?」

 

アルパレドの視界の中に、飛び込んできた一人の男。
スラリと美しく、それでいて鍛えられたと分かる、細身の身体。
シルバーの箱を一つ持っているが、それはここ最近トレンドと化した、ガンブレードケースではなかろうか。
ブラウンの髪を揺らし、灰色が入り混じる、不思議な青い瞳がこちらを見ている。
「すまない。待たせてしまったか」
「大丈夫ですよ」
謝罪に秒速で返答しながら、アルパレドの脳味噌はフル回転している。
アルパレドは知っていた。
とある筋からの情報で、職業の機密事項として、謎多きヴェールに包まれている。
そんな、今代における有名な英雄のパーツを。
暗めのブラウンの髪。
灰混じる青い瞳。
そして何よりも有名な、
……額に傷!
美しい男の顔を損ない、それでも美しさを引き立てる、顔面を横切るスカーフェイス。
パーツだけ羅列するならば、役満である。
いやしかし、まだわからない。
「初めまして」
まだわからないじゃないか。
「モンスター事業専門株式会社〝LeaF〟に〝体験所属〟させていただく事に成りました」
あの英雄は多忙だというし、こんな所に来るはずが。
「バラムを本拠地にしていた〝レオン〟と言います。これからしばらく、お世話になります」

 

……いや隠す気ゼロすぎるだろ!!!!??

 

「アルパレド・ルッティンと申します。記者ですが、レオンさんを勝手に記載はしませんので、ご安心ください」
「それは、心遣い有難う御座います」
楽しい。
面白い。
それを求めて、ここまできたが。
まさか特大の爆弾がついてくるとは思っていなかった。
反射で言葉を返しながら、じっとりと背中に汗をかいている自分に、アルパレドは気づいていた。
それは不安からでも、驚きから来るものでもなかった。
知らない事を知ってみたいという思いは、人一倍ある。
未知が自ら転がり落ちてきた、その興奮は、不安さえ凌駕するほどだ。
……なんて自分は運がいいのだろう!

「こちらこそ、しばらくの間、よろしくお願いいたします」

セントラ地方に来てよかったと、噛み締めながら。
アルパレド・ルッティンは、〝レオンと名乗る男〟に向けて、好奇心に輝く視線を向けていた。

 

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!