❖ Drown in Me to! - 4/10

 

兵士であれ、
傭兵であれ、
ハンターであれ、
傲慢であればある程、思い上がりが高ければ高い程。
戦う者として、致命傷になる。

それが許されるのは、

自らと周囲さえ駒として、圧倒的な武力と策略を持つ者。
生死の境界が曖昧な中でさえ、自らの死さえ楽しいと思う者。
目的の為ならあらゆる手段を笑って使える者。
親しき誰かの、愚かな自らの、その死に様さえ、結果的に笑える者。
そんな、一般人からすれば〝狂気〟の一線を越え、踏み潰して、それでも前に進む者達。

――――生存競争という戦場に適応した、〝鬼〟だけだ。

 

裏社会とは、言葉としては軽く思える。
頭の足りない若者からすれば、とても魅力的な世界にも見えるだろう。
けれどそこは、浅瀬ならいざ知らず、深ければ深い程に。

悪鬼羅刹と百戦錬磨の、――――〝鬼〟の巣窟だ。

 

バラムは島国だ。
大陸間との交通網もあり、利便性もある。
世界三大珍味の一つに国名がつき、海が美しい観光地だ。
国家武力はイマイチだが、それを覆す組織の本拠地がある島国。
〝バラムガーデン〟という、私立の兵士養成学校を国内に迎え入れ、国防関係でも協力関係を築いた強かな国。
先の魔女大戦において、ガーデンとの関係が拗れるかと思われていた。
しかし周囲の評価を余所に、これから国際情勢の混乱が続くと予想して、より一層の関係強化を結んだ。

バラムガーデンは、世界各国から孤児を始めとして、子供たちが集う学び舎。
バラムという島国は、世界各国から観光に訪れる、島外の者達が集う人気観光地。

それは裏社会から見れば、美味しい鴨が沢山いる事に他ならない。

社会に不慣れな、多くが寮生活の子供達。
観光にきて、警戒心も財布の紐も緩い観光客。
美味しい獲物がいっぱい。
それが、裏社会から見たバラムという島国だ。

けれど、裏社会の重鎮は決してバラムに手を伸ばさない。

バラムは恐ろしい程に、裏社会があってもクリーンなのだ。
風通しもよく、裏社会と言えない程、ただ表社会の不良が多くいる。
そして不良をしばき倒し、海の小童モンスターならボコボコにする、逞しい漁師が大勢いる。
もしくは、裏社会で生きる情報屋や、〝とある私立組織〟との取引相手しか存在しない。

それが何故なのか、知っている者は知っている。
それが何故なのか、察せない者は、いずれ知って裏社会から姿を消す。

――――バラムには、〝鬼〟がいる。

小さな島国にいるとは思えない、悪鬼羅刹の〝鬼〟がいる。
裏社会の者達が、絶対にバラムに足を踏み入れない理由の〝鬼〟がいる。
受け継がれ、引き継がれ、必ず存在する〝鬼〟がいる。

バラムの表社会を乱すような、裏社会の者達は全て。
●●●●の風紀を乱す者達は、例え学生であれども。

 

――――〝鬼〟に食われて死ぬのだ。

 

 

「バラムに進出して、あそこは死んだよ」
その一言で。
ティンバーの、
ガルバディアの、
その周辺の裏社会の者達は、呆れた顔で溜息を付くものである。
どんな理由があろうとも、手を出してはならない所に、手を出した者は死ぬ。
それが裏社会の常識だ。
あの魔女大戦で、より実感した事だったはず。
死んだならまだしも、〝バラムの鬼〟が堂々と表社会に出て、その猛威を振るっていた。
ならばこそ、脅威は十分に分かっているだろうに。
バラムという島国が、古巣に捕獲された〝鬼〟を再び受け入れた理由など、ここ数年の働きに対する恩情であると、十二分理解できたはずなのに。
国家を動かす程に、歴代の、当代の〝鬼〟は、

――――〝安全なバラム〟を作り出す機構として、裏に君臨し続けていたのだ。

「馬鹿だっただけだ」と、彼らは酒を飲み交わして、肩を竦めるだけ。
そうしてまた、裏社会においてバラムは、空白地帯として存在する。

――――裏社会の重鎮は、決してバラムに手を伸ばさない。

バラムに手を出してはならない。
知っている者達は知っている。
バラムで手を振るった時、自分たちが●●にされるという事を。

 

 

一ヶ月、コトコト煮込まれて。

 

――――幾度目かの地獄の釜は、ゆっくりと開いた。

 

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